「山本!」

「あ、待っててくれたのか?」

「なぁーに言ってんの!いつものことでしょ!?」



教室のいつもの席で私は山本の部活の帰りを待つ。山本が帰ってく るそれまではケータイいじったり、本を読んだり、窓からの野球部 の練習風景を見たりしてる。学校が終わって部活が終わるまでの3 時間はつまらないけど、山本がどろどろになったユニフォームをつ めたスポーツバックもって息を切らして走って教室まで来てくれる ことが嬉しくて、いつも部活の日は待ってた。



「いつも待ってもらってわりーな、。」

「んーん、全然!私だって山本と一緒に帰りたいし、」

「お、嬉しいこと言ってくれるのなー」

「あら、山本は私を嬉しくしてくれないの?」



いつも他愛もない話をして、二人で笑って、私が山本を茶化せばキ スしてくれる。小さな優しさでも暖かい気持ちになれて、そんな些 細ことが幸せに思えて、本当に私は山本がすきなんだなって思う。
今だって、私の頬を優しく包んで目の前が山本でいっぱいになる。 これ以上目を開けていると恥ずかしくなるから目を閉じる。視界が 暗くなると同時に周りの音が鮮明に聞こえる。ぽつ、ぽつ、



「あ、雨」



もう少しあとちょっとで唇が触れそうだったけど、私は山本を押しの けて窓の外をのぞく。微かだけど雨は降っていて、それでも雨はだん だんと大きくなっていく。



ー」

「ちゅーはお預け!雨、ひどくなってきたよ?私傘持ってないのに…」



山本は私の言葉にガクとうなだれる。私だって山本と1回でも多くキス できるならしたいけど、今の私には雨の中どうやって家に帰るかってこ としか頭になかった。



「あ、俺傘もってるぜ」



ほら、と私に黒い大きな傘を見せる。それをみて私は安堵した。これで 家に一緒に帰れる、私達は大きな傘に二人で入り、帰り道を歩く。私が 濡れないように大きな傘を私の方に傾けてくれている。そんな小さな優 しさが嬉しくて山本の制服の袖をつかんで歩く。もうすこしで家と言う ところで山本が足を止めて、私の方を向いた。



「どうしたの?」

「なにか忘れてないか?」

「なにを?」

「キス」

「な、なに言ってる…ん!」



言いかけた瞬間に世界は傾いた。傘があった私の上には山本の顔が目の 前にあって、唇には熱が触れていた。名残惜しそうに唇が離れると山本 は私の顔をみて笑った。



、顔真っ赤。」

「うるさい、好きってことよ!」












(降り注ぐは貴方の愛!)






090115