背を向けて一向にこちらを向かない我が愛おしい彼女の肩に恐る恐る手を置いた。

「なぁ…」
「さわんないでください、先輩なんてマネキン大佐の右ストレート食らって死んじゃえ。」
「……。」

さっきからずーっとこの調子…俺も原因はわかんねぇし。とりあえず、謝ろうとし てもこの調子なのだ。謝れる隙がない。始めは焦っていたが徐々にに自分に妬いて 拗ねてくれている彼女が恋しくなって、怒っている背中でさえも可愛くてしょうが なかった。でもいまそれを表に出すと余計怒られる。だから我慢はしているけど限 界。だけど頑張って堪える。そういつでも彼女への愛は矛盾している。

「…先輩」
「なんだ?」
「なんで私が先輩を怒ってるか分かります?」
「えっと…」
「…わかんないんですね。」
「……。」
「はぁ…も、いいです。」
「、」
「なまえでよばないでください。コーラサワーさん」

ここで会話は途切れた。気まずくなった。俺はなんもしていない。それだけはわか るのだが、どうしてもが理由を教えてくれない。俺も大人げなくいらついた。

「なんだよ、お前は何を怒ってるんだよ?!」
「!先輩は、楽しみにしていた約束をすっぽかされて、平気でいられるんですか!?」
「…でもちゃんと行ったじゃねぇか!」
「雨の中2時間待ちました。それにその日は私も遅刻しそうでした。そのとき見たん です。先輩が金髪の女の人と一緒にいるの…仲良さそうに、笑いながら歩いてたじゃ ないですか…街中でキスをして、高級そうなジュエリー店に入って…」
「それはちが…」
「なにが違うんですか?私はこの目で見ました。失礼します、私大佐に呼ばれてるん で……。」
「待てよ!!」


触れようとした腕には届かず、振り返った彼女の視線がバチリと合った。



「それはだれに触れた唇ですか?」
(お前のために買ったジュエリー、虚しく下に落ちていった。)



081011