吐き気がするほど強い香水の香り、腕に纏わり付くうっとうしい女、大
人達の嘘笑い、すべてが鬱で仕方がなかった。その中で隣にいる彼女は
それを思わせなかった。
「骸さん?」
「はい?…ああ、すみません。少し人酔いしてしまいました。」
「大丈夫ですか?明日も任務がありますし今日は休みましょう?」
「ええ、そうします。」
僕としたことが、らしくもなく考え事をしてしまった。マフィアになど
関わらないと決めたはずなのに、彼女が部下になってからマフィアに興
味を持ったのだ。彼女と一緒に部屋へ向かった。今回のパーティーはボ
ンゴレ主催で、唯の親睦を深める為のもの。だが本当は顔をよくしてい
ないと何かと不便なのだから定期的にパーティーを開いている。今回は
たまたま自分が沢田綱吉の代わりになっただけだった。隣に自分の優秀
な部下を連れて…
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「今日はお早めにお休みになられてくださいね。」
「、少しお話の相手でもしてください。暇なんです。」
「しかし…」
「僕がそうしたいのです。」
「では、失礼いたします」
「いいワインがあるんですよ。もいかがですか?」
「…少しだけですよ?これを飲んだらお休みになられてくださいね。」
返事の代わりににこりと笑えば彼女もにこりと笑った。僕はくだらない
人間のなかでそのくだらなさを見せない彼女に狂わされた。グラスを出
したとき好奇心からか、持ち歩いている毒を片方のグラスにいれた。僕
を狂わすものはこの僕の手からのがれられるのか?ワインボトルとグラ
スをの座る席に置いた。もちろん毒が入ったグラスは彼女の方
に置いて、
「骸さん。」
「なんですか?」
「楽しそうです。何か嬉しいことでもあるのですか?」
「ええ、とても楽しみな事があります。も一緒にどうですか?」
「そうですね、骸さんのお望みとあれば私もご一緒致します。」
まっすぐで日本人特有の漆黒の彼女の瞳に吸い込まれそうな勢いで、思
わずいつも周りから少し変だと言われた笑い方をしてしまった。(自分
の笑い方はこれが普通だ)彼女もそれに合わせ微笑んだ。ゾクリ、背筋に
冷気が走った。恐れではない、理性をくすぐっただけだ。思わず、口の
端が吊り上がる。
「どうぞ飲んで下さい、このワインは僕も好きです。」
「ではいただきます。」
がグラスを持ち上げ、口へ近付ける。いい香りがしますね、と一
言言いワインを口に含んだ。そのしばらくすると彼女は口の中の異変に
気が付いたのか首を傾げ、さらに毒がまわってきたらしく、呼吸が不規
則になった。するとグラスは彼女の手の中で傾き、スローモーションで
下へと落ちていった。床に触れるとグラスは脆く壊れていた。椅子から
崩れ落ちる華奢な体を抱き留め僕は笑った。
「やはり、人間とはつまらない」
世にもシュールな喜劇
(すべてはくだらない戯言)
080918
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