いつも忙しくて、けれど時間ができればすぐに愛にきてくれた、それがジノでい つもはへらへらしているジノも子供っぽいけど、二人っきりになれば大人で甘い 声で囁いてくれる。でも今日は早く帰ってくる筈なのに、半日もたっていた。 まさか、そんなことはないと思うけど何か危険な事に巻き込まれたんじゃ…。そ う考えると胸がきゅうっと締め付けられて、自然と目頭が熱くなった。瞳から涙 は零れなかったけど心に不安は募るばかりだった。

「?」
「!ジノ!!」

ソファーにうずくまっている私のうしろから聞こえたのは今まさしく想っていた ジノだった。思わず私はジノに駆け寄り抱き着いた。ジノの温かい体温が伝わっ て不安は掻き消された。

「わ!どうしたの!??」
「ジノ、」
「…?」
「何でもない」

ジノの体に顔をうずくめていると、ジノが私の頬に手を伸ばして顔を上へ向けさ せた。目頭にはまだ熱が残り、視界はとろりとしていた。

「言ってくれなきゃわかんないし、なんもできないんだけど?」
「…ジノの帰りが、遅いから、心配しただけだよ」

ジノの押しに弱い事を知っていて私に囁く彼は卑怯で意地悪で、それでも心が怒 りではなく幸せを感じて本当に私はジノが好きなんだなんて思ってみたりして温 もりを確かめるだけだけど、それでも彼に私は幸せを求めている。それだけ私は 彼に対して依存症なのだろう。

「可愛いこと言ってくれるねぇ、ごめんね、今日はいつもより作戦の行動が遅れ て…。あ、。」
「なぁに?」

甘えているときに顔を上げれば確かな温もりが降ってくる。それを私は拒む事な く受け止めて胸の内にまだ唇に残る情熱を胸の内にしまい込んだ。

「ありがとう、」




魔法にかかったような朧月夜
(30分という名の一瞬)



080526