嫌い。






「あ、」



屋上には誰もいない、だから油断してたけど。いきなり 腕を引かれて思わず声が出てしまった。ふと腹に周った 腕は黒、後ろから抱きしめられている格好だ。こんなこ とするのは一人しかいない。



「やぁ、。」

「雲雀…何か用?」

「別に」

「じゃあ離して私はあんたと一緒になんか居たくないの」

「今は授業中だ。君をサボりとして捕まえただけだよ。」

「……」



「さぁ、サボった君を僕はどうしようか?」



後ろから抱きしめられている所為で身動きが取れない。 雲雀は私の耳元で話していて、彼がしゃべる度に背中に 恐怖がゾクリと走る。ひしひしと私へ向けられる殺気は ただの脅しだ。雲雀恭弥は嫌い、私を物のように見るか ら。



「ねぇ、黙ってないで何とか言ったら?」

「…離して」

「やだね」



その途端、私は近くの金網に押し付けられた。大きな音を 立て、背中には激痛が走る。先ほどまでは見えなかった顔 が見え、口は弧を描いていて、またゾクリと背中に恐怖ら しきものが走る。もういやだ、関わりたくない。逃げたく ても腕を掴まれたまま金網に押し付けられ逃げられない。 押さえつけられた背中はずきずきと痛み、握られている腕 はもっと痛い。



「ねぇ気付かないの?」

「なに、に…?」



怖くて雲雀を直視できなくて、目を逸らしていると雲雀は 私に噛み付くようなキスをした。ぷつんとなにかが切れた ような感触に目を細めると生理的拒絶がでたのか涙が流れ でた。唇からは鉄の味がする。唇が、切れたんだ…。雲雀 は私が涙を流したことにびっくりしていた。今思えば今ま で雲雀の前で涙を流したことはなかった。雲雀がびっくり しているうちに最後の力を振り絞り、雲雀を押しのけた。



「なん、で!いつも…こんなことすんの?」

「……」

「わけわかんないよ、」

「気付かないのはそっちでしょ?」

「え…?」
「いいよ、気付くまで待ってあげる。でも一つ教えてあげるよ。」



「僕は、君が狂おしいほど好きなんだ」










近いようで遠い愛
( 全 部 が 彼 の 戯 言 )



081221