初めて彼女に会ったのはテラスでだった。
まだ地上にいたとき、いろいろと考えこんでいて、外の空気を吸お うとテラスへでた時だった。彼女は壁に寄りかかり耳を澄まさない と聞こえないくらい静かな声で歌っていた。ぽつり、ぽつり、口か ら零れる声は綺麗で彼女の前で聞き惚れてしまったほどだった。ど れくらい見つめていただろうか、僕の視線に気がついた彼女は顔を 赤くし、慌ててその場所を立ち去ろうとしたがそれを僕が腕を掴み 阻止した。





「っ、」

「待って!あの、立ち聞きするようなことしてごめん。…君の声、あまりにも綺麗だったから聞きほれちゃって…」

「綺麗じゃないですよ、」

「そんなこと、ないよ…すごく綺麗だと思う。」

「…あ、ありがとう。」

「アレルヤ…僕はアレルヤ・ハプティズムって言うんだ。」

「 、です。じゃあ、私はこれで…」





そういって彼女はテラスを出た。それから僕と は他愛のな い話でよく話すようになった。けどその日から は僕の前で あの歌を歌わなくなったんだ。理由は聞かないし話さない。
そんな穏やかな日が過ぎていよいよソレスタルビーイングの初ミッ ションの日になった。今日、ソレスタルビーイングは世界に名を広 げる。もうすぐ、ミッション開始の時間だ。





「ア、レルヤ…」

「 ?」

「あの、」

「うん」

「…気をつけて、ね?」

「うん、ありがとう。」

「私、アレルヤと出会って以来1回も歌を歌ってないよね」

「…うん」

「あれね、誰かを励ますときにだけ歌う歌って教えられた歌なの。」

「え?」

「あの時私は一人で、寂しかったの。だから歌って自分を励ましてた、けど今はアレルヤと会って毎日の励ましが貴方になったの、だから…!」





スーツをぎゅっと握り締めながら顔を真っ赤にして言う が可愛 くて、小さな身体を抱きとめる。抱きしめているうちは は恥ず かしがり、腕の中でもがいていたけど、少し経つと大人しくなった。





「ありがとう、僕は必ず君の元へ生きて帰ってくるよ。」





彼女の髪に小さくキスを落として、僕は戦場に向かった。
たった小さな 幸せを守るため、世界に戦争のない平和が訪れるように、僕は戦うと決 めた。僕が守りたいものはここにある。今ここにいると、これ からもっと絆が深くなるであろう仲間達を守るため。戦場で僕は殺人犯 になり、手は震える。精神はそんなに強いわけじゃない。でもそんな僕を押すように僕は戦場で、ひどく美し い旋律を聴いたんだ(それは愛しい彼女のあの歌)










090210 メル
ave maria様へ提出「ひどく美しい旋律を聴いたんだ」
素敵な企画へ参加させていただきありがとうございました。